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「デザイン思考って結局なに?」「アイデアが浮かばないのは才能のせい?」——デザインやものづくりに関わる人なら、一度は突き当たる問いだと思います。ツールや配色のスキルと違って、"考え方・発想力"は本で学びにくいと思われがちですが、実は良書がそろっている分野でもあります。
デザイン思考、デザインシンキングといえば、IDEOがめちゃくちゃ有名ですよね。デザイナーじゃない人でも結構知っている話だと思います。IDEOは「デザイナーじゃなくてもこういう考え方はできる」という"デザイン思考の民主化"みたいなことをずっと続けてきて、それはある程度達成されたんじゃないかと個人的には見ています。ちょっとした社内研修でデザイン思考を取り入れる会社も、かなり増えましたよね。ではそのIDEOが今どうなったかというと、AIとの戦いも含めて大規模なレイオフをして、日本からも撤退してしまった。一つの時代が終わったな、という感じがします。まあこれはただの業界の昔話なんですけど。
じゃあデザインシンキングはもう不要になったのかというと、全然そんなことはなくて、重要な頭の使い方だと思います。AI時代に人間がこういう発想を持っておくのも悪くないです。ただし、AIもデザインシンキングはそれなりにきちんと学んでいるので、浅い理解だとAIにやられますね、という話でもあります。なのでこの記事では、IDEO式のデザインシンキングそのものというより、デザイナーが持っているような頭の使い方、デザインするようにプロジェクトを見ていく"広義のデザイン思考"を対象に、いろんな角度から説明してくれる本を紹介します。近い言葉にアート思考・クラフト思考もあって、実は今回の中にもそういう話も少し混ざっているんですが、そこを細かく区分けするのは今回の狙いではないので、広い意味でのデザイン思考、と思って読んでください。
この記事の書籍データについて
掲載した全12冊は、書名・著者・発売日・書影を一次情報(版元・書誌データベース)で個別に確認済みです。実在しない本や推測情報は載せていません。
目次
デザイン思考はもう"共通言語"|採用・アサイン担当が押さえる理由
先に私の立場を言っておくと、デザイン思考はこの業界ではもはや共通言語で、全員がある程度は理解している前提のもの、くらいに思っていいと考えています。「これを使って何かをする」というより「知ってて当然ですよね」というレベル——ある種のリテラシーに近いものになっている、という認識でいるといいと捉えています。そして繰り返しになりますが、決して古びたやり方ではなく、デザイン思考を使ってプロジェクトを前に進めたり、ユニークなビジネスを作ったりできるのは今も変わりません。
私が個人的にデザイン思考をいいなと思っているのは、表層的な見た目の良さや、ただの使いやすさだけでなく、「ビジネスとして儲かるか」「ビジネスとして持続可能性があるか」という観点までを多分に含んでいる点。ここが極めて実践的だと思っていて、だから私はデザインシンキングを推しています。
用語だけ整理しておくと、この記事で扱うのは次の2つです。デザイン思考(デザインシンキング)=ユーザーへの共感から課題を定義し、アイデア→試作→検証を回して解決に導く"プロセス"の考え方。アイデア発想・発想法=そのプロセスの中で使う、発想を広げるための"技術・道具"。大きな流れと、その中で使う具体的な道具、両方を知っておくと、思いつきに頼らず狙って良いアイデアを出せるようになります。採用の現場でも、AIで"きれいに作る"ハードルが下がったぶん、評価軸は「何を作るかを見極める上流の力」に移っている。だからこそ、評価する側・育てる側こそ、この分野の共通言語を持っておく価値があります。
【比較表】デザイン思考・アイデア発想の本12冊 早見表
「採用現場での評価観点」列は、私が「読んだ人のどこが強くなるか」を書いた、この記事だけの視点です。
| 書名 | 区分 | 学べること | 発売年 | 採用現場での評価観点 |
|---|---|---|---|---|
| デザイン思考が世界を変える〔アップデート版〕 | DT定番 | デザイン思考の全体像 | 2019 | 思考の共通言語 |
| HELLO,DESIGN 日本人とデザイン | DT国内入門 | 日本人向けの入り口 | 2019 | 難しく考えない姿勢 |
| 実践 スタンフォード式 デザイン思考 | DT実践 | 5ステップを手を動かして | 2019 | プロセスを回せる力 |
| はじめてのデザイン思考 | DT入門 | 基本+実践カード | 2021 | 研修・ワークで使える |
| まんがでわかるデザイン思考 | DT入門(まんが) | 概念を短時間で | 2017 | 最初の全体像 |
| 発想する会社! | DT古典 | IDEOの技法 | 2002 | チームの創造の作法 |
| クリエイティブ・マインドセット | DT入門 | 創造力への自信 | 2014 | 挑戦する姿勢 |
| HBR デザインシンキング論文ベスト10 | DT教科書 | 理論の見取り図 | 2020 | 経営視点での理解 |
| 発想から実践まで デザインの思考法図鑑 | 新刊・辞典 | 手法を目的から逆引き | 2023 | 引き出しの豊富さ |
| アイデアのつくり方 | 発想・古典 | 発想の原理 | 1988 | 発想の型を持つ |
| 考具 | 発想・定番 | 21の発想ツール | 2003 | 手数の多さ |
| 直感と論理をつなぐ思考法 | 発想・中級 | ビジョン起点の発想 | 2019 | 自分起点の構想力 |
【デザイン思考】まず読む定番・入門
デザイン思考は、まず「全体像」を掴むのが先決。いきなり分厚い理論書に行かず、入口の本でプロセスの流れを体で理解しましょう。ここから紹介する5冊が、その入口です。
1. デザイン思考が世界を変える〔アップデート版〕
デザイン思考が世界を変える〔アップデート版〕をAmazonで見る
ティム・ブラウン(千葉敏生 訳)/早川書房/2019年/中級
デザインファームIDEOの元CEOによる、デザイン思考のバイブル的一冊。まあ、これが原典ですよね。まずはこれを読んでおきましょう。中身も分かりやすく縮約されているというより、「こういうもんなんだぞ」ということがきちんとリッチに書かれているので、ちゃんと読むならこの一冊から。ケーススタディがたくさん載っているのも便利で、普通に勉強になります。人に説明したり話したりするときに「あの例ではこうやっていたんだよ」と持ち込めるので、そういう引用の原点にもなる一冊です。安価な文庫版もあります。
2. HELLO,DESIGN 日本人とデザイン
石川俊祐/幻冬舎/2019年/入門
これも日本語で読める原典の一つで、読んでおいて損はないです。実は一冊目を読まずにこっちだけ、というのも、ありといえばあり。別に違うことを言っているわけではないんですが、日本人が、日本の企業やビジネスパーソンを対象に書いている本なので、その点でこっちの方が馴染みがいいという人もいるんじゃないかな、という気がします。「デザインは一部の人の特殊能力ではなく、誰もが使える考え方」というメッセージが、肩の力を抜いて読ませてくれます。
3. 実践 スタンフォード式 デザイン思考
ジャスパー・ウ(見崎大悟 監修)/インプレス/2019年/入門
デザインシンキングを有名にした立役者の一つが、このスタンフォード大学のd.schoolだと思います。この本はもう、実際にどんなふうにワークショップをするか、どういう作業をするのか、というハウツー本に近くて、フォーマットもいくつか載っている。これを見ながら、自分のプロジェクトで実際にやってみることもできます。共感→定義→発想→試作→検証の5ステップを図解で手を動かしながら学べるので、概念よりは実践に重きを置くならこの本かな、と。
4. はじめてのデザイン思考 基本BOOK&実践CARDs
伊豆裕一/東京書籍/2021年/入門
これも実践系かつ入門系。特徴は「カードセット」というワーク用のキットがダウンロードできるようになっていて、本のやり方通りに、とりあえず試しにやってみることがある程度できるよう設計されている点です。ついでに言うと、この本に限らずデザインシンキング系の本には必ず「こうやってうまくいった例」が載っているんですよね。こういうのを見ると、やっぱりデザインの力ってすごいな、とニヤニヤしながら読めて——個人的に、デザインシンキングの事例ページは好物です。
5. まんがでわかるデザイン思考
小田ビンチ・坂元勲(田村大 監修)/小学館/2017年/入門
やはり漫画にすると読みやすいし、ハードルが下がりますよね。今まで紹介した本より先に、まずこれを読んで「とりあえずこんなもんね」とつかむとか、就活用にアウトラインだけ理解しておきたいとか、そういう場合は迷わず手に取っていいと思います。全然恥ずかしくないです。ゼロ章として漫画を読むのは私は結構おすすめで、ビジネス書でも「漫画で交渉術が分かる」みたいな本がありますが、ああいうので全体感を先につかんでおくと、本を1ページ目からきちんと読むときの助けになる。そういう意味でもおすすめです。
【デザイン思考】理論・組織で深める
入口を抜けたら、より深い理論や、チーム・組織でデザイン思考を回すための本へ。ここは中級以上、あるいはリーダー・マネージャー志向の人向けです。
6. 発想する会社! 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法
トム・ケリー/早川書房/2002年/中級
この本も古典なんですが、すごくいい。もう二十何年前の本なのに、色褪せない事例がたくさん載っていて、今読んでも楽しいんですよね。やっぱりデザイン思考って、人の行動を観察して、そこにある本質的なところを解決の糸口にしていく、というものなので、事例も考え方も含めて全然、時の試練に耐えまくる。多分十年後もまだ読まれているんじゃないかな、と思います。観察の重視、プロトタイピング、チームの作り方——組織で創造を回したい人に。
7. クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法
デイヴィッド・ケリー&トム・ケリー(千葉敏生 訳)/日経BP/2014年/入門
これもデザインシンキングの本なんですが、私がおもろいなと思うのは——IDEOを作ったのは実は兄弟なんですよね。その弟にあたるトム・ケリーがこの本の著者になっている。IDEOはごく小さな会社から全世界に何百人という規模まで成長したそうなんですが、そのときの実務面・組織面を担当したのが、この弟だと言われている。そういう人の息遣いを感じられる、という見方をしても面白い一冊です。まあこの読み方をするとだいぶデザインシンキングマニアっぽくなっちゃうんですけど、中身もとても良い。デザインシンキングって、読むたびに「こういう観点もあるのか」「理解が深まったな」となる、噛めば噛むほど味が出るスルメみたいなところがあって、これはそのスルメ本の一冊として非常におすすめです。
8. デザイン思考の教科書(HBR デザインシンキング論文ベスト10)
ハーバード・ビジネス・レビュー編集部/ダイヤモンド社/2020年/中級
良くも悪くも、いろんな例をコンパクトに眺められる本かなと思います。さっきから繰り返し言っちゃってますが、デザインシンキングってやっぱり、いろんな事例を見ること自体が面白いし、そこから自分に近いものを見つけていくのが一つの醍醐味なんですよね。その観点で、この本にもちゃんと事例が載っているので、インプット本としてもいい。ティム・ブラウンをはじめとする名論文10本を、"経営・ビジネスの文脈"で捉え直せるのが特徴です。
9. 発想から実践まで デザインの思考法図鑑
btrax(ブランドン・片山・ヒル 監修)/ソシム/2023年/実務(辞典)
今回のリストで最も新しい2023年刊。これはbtraxという、サンフランシスコ拠点で日本にも進出しているデザインファームが書いている本ですね。中身はIDEO式というより「btraxナレッジ本」という感じがあります。btraxはまだIDEOほど有名ではないのかもしれませんが、私はすごく尊敬しているいい会社で、この本を読みながら「btraxはこんなふうにやっているんだ」と学ばせてもらいました。手法を目的から逆引きできる図鑑になっていて、しかもイラストがめちゃくちゃ多くて超読みやすい。ワークショップ設計や実務の引き出しとして重宝します。
【アイデア発想】発想力を鍛える古典・実践
デザイン思考という大きな流れの中で、実際にアイデアを"広げる"ための道具箱がこちら。発想は才能でなく技術です。古典と定番で、狙ってアイデアを出す型を身につけましょう。
10. アイデアのつくり方
ジェームス・W・ヤング(今井茂雄 訳)/CCCメディアハウス/1988年/古典
正直、この本を紹介記事に入れるか少し迷ったんですが、近いところがあるなと思って入れました。デザインも、いろんな面で「アイデア」が重要なんですよね。そしてアイデアってゼロからは生まれなくて、インプットがあって、それをくっつけたり離したりしながら生まれていく。このプロセスは、IDEOのデザインシンキングもそうだし、その遥か昔にヤングが書いたこの本も、同じようなことを言っている。ある種、デザインシンキングの超先輩みたいな本なんじゃないかと思っています。「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである」の一文に集約される名著で、全然分厚くないのでさらっと読めますし、古典として今も色褪せない一冊です。
11. 考具 ―考えるための道具、持っていますか?
加藤昌治/CCCメディアハウス/2003年/入門
これもすごく有名な本ですね。発売がかなり古くて、確か2003年。もう二十年以上読み継がれている本です。中身はタイトル通りで、「考えるための道具」——マンダラート、アイデアスケッチ、カラーバスといったフレームワークと、それをうまく組み合わせて使うところの具体が、いろいろ書かれています。「発想が苦手」という人ほど、こうした道具を1つずつ試すことで手数が増えていく。実践向きの一冊です。
12. 直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN
佐宗邦威/ダイヤモンド社/2019年/中級
この本には、特徴的な「妄想」という言葉がめちゃくちゃよく出てきます。風呂敷を広げるとか構想するとか、そういうものにつながる言葉なんですけど。結局、初期仮説みたいなものを持てないと、その先の検証も何も起こらない。そしてそこは、実は結構AIがしにくい、できないことの一つになってくるんじゃないかと個人的には思っていて。直感や妄想に理論立てていくのは難しいし、反論もすごく多いだろう領域に果敢に挑戦する一冊です。妄想→知覚→組替→表現のプロセスで、内側から湧くビジョンを形にしていく。私は結構好きですね。
採用・アサイン担当が本選びで見る「3つの評価軸」
最後に、採用の現場から見て、デザイン思考・発想の力をどう評価しているかを共有します。本を読むときの視点にしてください。
(1) 課題を捉えているか(共感・定義)
良いアイデアの前に、良い問いがある。「何を解くべきか」を捉えられる人は、デザイン思考の入口を理解しています。ポートフォリオでも「なぜこれを作ったか」の課題設定を見ています。
(2) 発想に再現性があるか(型を持っているか)
一発のひらめきでなく、狙ってアイデアを出せるか。『アイデアのつくり方』『考具』のような発想の型を持つ人は、安定してアウトプットできます。
(3) チームで使える言葉にできるか
発想を一人で抱えず、チームの共通言語にして巻き込めるか。デザイン思考を"みんなで回せる"人は、リーダー・マネージャーとして評価が上がります。
つまり、この分野の本は「大きな流れ(デザイン思考)を掴み、道具(発想法)で手数を増やし、チームの言葉にする」という順で使うのが王道。ぜひ手を動かし、実際の課題で試しながら読んでください。
よくある質問(FAQ)
Q. デザイン思考と、アイデア発想・発想法の本は何が違いますか?
A. デザイン思考は「共感→定義→発想→試作→検証」という課題解決のプロセス(大きな流れ)、発想法はその中で使う発想を広げる技術(道具)です。まずデザイン思考で全体像を掴み、発想法で手数を増やすと相乗効果があります。
Q. 未経験者に最初の1冊を薦めるなら?
A. 活字が得意なら『HELLO,DESIGN』、まず雰囲気を掴みたいなら『まんがでわかるデザイン思考』です。どちらも入口として肩の力を抜いて読めます。
Q. 「まんがでわかる」系は、採用の評価に足りますか?
A. 入口としては全く問題ありません。むしろ「全体像を先に掴んでから深掘りする」学び方は効率的です。ただし、まんが1冊で止めず、実践書や古典へ進めているかは見ています。
Q. デザイン思考の本を読んだ候補者と、読んでいない候補者で、面接での差は出ますか?
A. 出ます。読んでいる人は「なぜこれを作ったか」という課題設定を言語化できる傾向があります。ただし大事なのは読了ではなく、その考え方を制作物に反映できているかです。
Q. 新刊と古典、どちらを優先すべきですか?
A. 原理を扱う古典(『アイデアのつくり方』『発想する会社!』など)は価値が落ちにくいので優先度が高いです。一方、手法の引き出しや最新事例は新刊(『デザインの思考法図鑑』など)で補うと、両輪でバランスが取れます。
まとめ|AI時代こそ、デザイン思考が高速で回る
AI時代にデザイン思考はどうか、という話をすると、よく言われるのが「デザイン思考の中にある"共感"はさすがにAIにはできない、だから人間の仕事が残る」という言説です。私も、そらそうやろな、と思います。ただ、それ以上に私がAI時代にデザイン思考がさらに意味を持つと思うのは、いわゆる作業フェーズをAIが秒でやってくれるようになるという点です。
たとえば、さっきの共感のフェーズもそうですが、インサイトを発見し、それをもとに問題を定義していくところって、大量の定性調査をベースにやっていくんですよね。仕事で議事録や音声の記録を扱っている人も多いと思いますが、あれをそのまま放り込んで、文字を起こし、意味を抽出し、統合する——これは、インサイト発見のプロセスに極めて近い。今まではポストイットを使って人間が考えてやっていたところですが、この辺りはAIがすごく得意なことだと思っています。こういうAIが得意な作業レイヤーと組み合わせることで、デザイン思考が超高速で回転していけるようになる。私はそう思っています。
デザイン思考も発想力も、才能ではなく学べる技術です。大事なのは"知っている"で止めず、実際の課題で"使える"ようにすること。1冊読んだら、身の回りの課題で1つ試してみてください。
あわせて、これからのデザイナーに欠かせないAIとの向き合い方はこちらも参考にどうぞ。
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