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「UXデザイナー」は将来なくなる? UXの「当たり前化」と「専門化」

・「UXデザイン」という仕事や「UXデザイナー」という職種がなくなる、という説の真偽やその背景を知りたい
・UXデザイナーという職種の将来性を知りたい
・デザイナーとして給料を上げていくためにUXデザイナーというキャリアが有効なのかを知りたい

この記事では「UXデザイナー消滅論」の背景を紐解きます。「UXデザイナー」という職種の将来性に不安を抱えている方、UXデザイナーとしてのキャリアを歩みたい(既に歩みはじめている)方にとって、ご自身のキャリアを考えるヒントになることを目指しています。

私自身が、UXデザイナーの採用を続けていること。そして、案件によっては自身がUXデザイナーとして動いていることから感じる肌感覚も交えながら、UXの現状と少し先の未来を考えたいと思います。

「UXデザイナー」は将来なくなる? UXの「当たり前化」と「専門化」

定義が広すぎるUXデザイン

UXデザインの定義という話を始めると、それだけで本が一冊書けてしまいます。Wikipediaでは以下の書き出しをしつつ、いろいろな定義を紹介しています。

「ユーザーエクスペリエンス」という言葉は、文字どおり「利用者の経験」を意味する。小学館デジタル大辞泉では、「製品・サービスを使用する際の印象や体験」と定義されている。

ユーザーエクスペリエンス(wikipedia)

有名な『Elements of User Experience』(著:Jesse James Garrett /New Riders Press/2010)という本では、以下のような「UXの5段階モデル」という考え方を提示しています。簡単に何をするかを整理すると以下のようなイメージでしょうか。

  1. 戦略(Strategy):「誰」に「どんな価値」を届けるか、「ビジネスにおける位置づけ」は何かを決める
  2. 要件(Scope):「機能・コンテンツ」「ストーリー」「ビジネスモデル」などのサービスのアイデア設計
  3. 構造(Structure):実際のアプリ/サービスの「マップ」を作りつつ「UIモデル」に落とし込み
  4. 骨格(Skeleton):利用者が理解しやすいよう「ワイヤーフレーム」や「デザインルール」を策定
  5. 表層(Surface):「視覚的なデザイン(見栄え)」をつくる最終段階

UXは「利用者の体験」なので、あらゆる検討事項・作業が含まれてしまうので、逆にわかりにくいと言われてしまいます。デザイン界隈では「UXという言葉のUXが悪すぎる」という言い方をする人も少なくないですね。

今起こっているのは、UXの「当たり前化」

さて上記のようなUXですが、一昔前は「”意識の高い”プロジェクトが積極的に導入するフレームワーク」のような扱いでした。そういったフレームワークを理解していて、サービスとして提供する会社は「UXコンサルティング会社」と呼ばれ、その担当者は「UXデザイナー」や「UXコンサル」と呼ばれていました。

一方で最近は、大企業×伝統的な大手ベンダー(富士通とかNECとか)による大規模開発プロジェクトでも、スタートアップのリーンなプロダクト開発でも「UXデザイン」のプロセスを、多かれ少なかれ踏襲することが多くなってきています。以下の記事のように、日本語で書かれたUXデザインに関する書籍やWEB記事、セミナーなど情報源も充実してきました。

【レベル別】UI/UXデザイン学習におすすめの本20選(2021年9月更新)

・UI/UXの勉強をはじめたいけど、本がたくさんあってどれから読み始めてよいかわからない ・デザイン初心者ではないけれど、自分のレベルに合ったUI/UXの書籍を探している ・デザイナーではないけれど、 ...

こういった状況で起こっているのがUXの「当たり前化」です。意識の高いプロジェクトや、特別なスキルを持った専門家だけが取り組むことではなく、開発に関わる多くの人...経営者・営業・マーケ・カスタマー担当・デザイナー・リサーチャー...が広くUXプロセスに関わることになってきているため、「UXデザインの専任担当者としてのUXデザイナー」とあえて言う必要がなくなってきている。いわば「全員がUXデザイナー」状態に近づいてきているため、「UXデザイナー」という専門的な肩書は将来なくなると言われているのが「UXデザイナー消滅論」ではないかと私は考えています。

求人の現場で進む、UXの「当たり前化」

こちらは三井住友銀行さんの求人コンテンツですが、UXの5段階モデルを用いていますね。銀行の求人にUXデザインがここまで具体的に書かれることはなかったかと思います。

もっと「当たり前化」が進んでいると言えそうなのが外資勢で、Twitterの求人(Search Twitter jobs)を見ると世界中のどの拠点でも「UXデザイナー」という職種は募集されていません。一方で、個別のデザイナーの職種説明を見ると以下のように書かれています。

Senior Product Designer, Emerging Businesses

What You’ll Do:

・Design, prototype, and develop elegant solutions for our mobile and web apps.

・Identify user needs, sketch solutions, build prototypes, test ideas with our user research team, and refine designs with data and user feedback.

・Document detailed interaction models and UI specifications.

・Collaborate with other designers to maintain design consistency and coherence across the features on Twitter app and website.

・Evangelize best UI practices to other designers, engineers, and product managers.

・Mentor other designers

翻訳すると、この「シニアプロダクトデザイナー」の業務内容は…

1)モバイルアプリやウェブアプリ向けの、エレガントなソリューションを設計、プロトタイプ作成、開発する。

2)ユーザーのニーズを特定し、ソリューションをスケッチし、プロトタイプを作成し、ユーザー調査チームでアイデアをテストし、データとユーザーフィードバックを使用して設計を改良

3)詳細なインタラクションモデルとUI仕様のドキュメント化

4)他のデザイナーと協力して、Twitterアプリやウェブサイトの機能全体でデザインの一貫性を維持

5)他のデザイナー、エンジニア、プロダクトマネージャーにUIのベストプラクティスを伝える

6)他のデザイナーのメンターをする

ということで、1)〜3)あたりはUXデザイナーの仕事そのものという感じです。一方で、もはやこれが専門職として存在するのではなく「デザイナー」という職種なら当然持っているべき能力としてあつかわれています。

この傾向は、今後日本のデザイナー求人でも起こってくると私は考えています。デザイナーにとって「UXのことは、ある程度できて当たり前」という状態です。一方で、UXに関する幅広すぎる能力をまんべんなく習得することの難しさから、一芸に特化した人材「専門化」を選ぶことも今後の戦略になってくると考えています。

今後は「細分化された専門化」が起こるはず

ここからは少し未来予想的になってしまいますが、これからの「UXデザイン」がどう扱われていくかについて私の考えをまとめます。私は、今後UX領域では「細分化された専門化」が起こるのではないかと考えています。

「細分化された専門化」が進むとは、広いUX領域の中の個別の領域ごとに専門性を高めていくデザイナー、リサーチャー、プランナーなどが生まれていくことではないかと思います。再び「UXの5段階モデル」を借りて説明すると以下のようなイメージです。

  1. 戦略(Strategy):「誰」に「どんな価値」を届けるか、「ビジネスにおける位置づけ」は何かを決める
  2. 経営者と一緒に事業戦略を考える戦略コンサルのような役割、マーケティングの専門家としてターゲットのLTVを高める構想を描く役割。美大や専門学校出身のデザイナーというよりは、総合大学やMBA出身者が強みを発揮できる段階ですね。

  3. 要件(Scope):「機能・コンテンツ」「ストーリー」「ビジネスモデル」などのサービスのアイデア設計
  4. →戦略を実現するための具体的なアイデアを構想できる起業家のようなタイプ。いろんなビジネスの事例を知っていたり、それらを組み合わせて企画書を作れるプランナー。もしくはそれらの作業をする人を支えるマーケティングリサーチャーのような人も活躍できそう。機能の洗い出しが必要なので、SEのような上流設計者も向いてそうですね。

  5. 構造(Structure):実際のアプリ/サービスの「マップ」を作りつつ「UIモデル」に落とし込み
  6. →実際にどんなサービスになるか、画面数はといった実現性を検証していく段階です。サイトマップを書いていたWEBディレクターやPMのような方の力が必要ですね。実装に向けたドキュメント化が必要なので、SEのような上流設計者も活躍の場がありそうです。

  7. 骨格(Skeleton):利用者が理解しやすいよう「ワイヤーフレーム」や「デザインルール」を策定
  8. →AdobeのXDやFigmaを使ってワイヤーフレームを作成していく作業なので、WEBディレクターやUIデザイナーがガンガン手を動かす段階ですね。また、ここでUI調査を行うことも多いので再びリサーチャーにも出番が増えてくるかと思います。この段階でサービス内の文言を決めていくことが多いのでコピーライターも重宝されると思います。

  9. 表層(Surface):「視覚的なデザイン(見栄え)」をつくる最終段階
  10. →ここは美大や専門学校出身のデザイナーの強みが最も出るパートでしょう。配色ルールの策定、各UIパーツのデザイン、アイコンまで作るものは多岐にわたります。またどの段階で作業をするかは難しいのですが、サービス名・ロゴなどの策定も必要なので、伝統的なグラフィックデザイナーやコピーライターには一日の長がある領域だと思います。

もちろん現状でも「UXデザイナー」という肩書の方は多数いて、各プロジェクトで価値を発揮していると思います。UXのフレームワークを知っているだけではスムーズにプロジェクトは進まないため、各プレイヤーごとに得意領域・経験値・技術のを生かして実務を進めていると思います。

今後はもっと専門化が進み、「この部分はAさんに、この部分はBさんに、この部分は外注のC社さんに」といった形で、分業化が進んでいくと思います。それらの専門性を理解し、専門家を適切にアサインし、束ねられる人が次世代のUXデザイナー、もしくはCXO(Chief experience officer)と呼ばれるようになるのかもしれませんね。

全体像を俯瞰し、どの専門性を伸ばしたいかを考えよう

採用面接をしていると「UXデザインをやりたい」という方は非常に多いのですが、慎重に何をしたいのかを聞くことにしています。よくよく話を聞いてみると、「骨格(Skeleton)」「表層(Surface)」に該当する、実質的にはUIデザインに興味を持っている方も少なくありません。

逆に、「戦略(Strategy)」に近いレイヤーの仕事だと、Photoshop・Illustrator・XD・Figmaといったデザインツールに触れることはほぼ無く、パワーポイントとエクセルとにらめっこすることがほとんどというのも実態です。戦略コンサル背景の方、事業会社の新規事業担当者から転身する方も増えてきています。

何が本当に自分がやりたいことなのか、しっかりと情報収集して考えるのが良いと思います。最近はこの領域の本もたくさん出版されています。知識レベルに合わせておすすめの本を↓でご紹介していますので、ぜひ幅広く知識を持った上で「UXデザイン」とどう付き合っていくか考えることをオススメします。

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