・UI/UXの勉強をはじめたいけど、本がたくさんあってどれから読み始めてよいかわからない
・デザイン初心者ではないけれど、自分のレベルに合ったUI/UXの書籍を探している
・デザイナーではないけれど、UI/UXについて知識を得たい
この記事ではレベル別にUI/UXのおすすめの本を20冊紹介します。
この記事を読むことで、デザイナーの方は、自分のレベルに合わせた本を見つけられるように、エンジニアやディレクターなどのノンデザイナーの方は、プロジェクトの進行に役立ちデザイナーと共通言語をもてるようになります。また、既にUI/UXについては一定の知識や経験がある方は今後体系的にどう学んで進いけば良いかが分かるように整理しました。デジタル庁も発足し、デジタル方面のスキルは、より注目を集めそうですね。
私はデザイナー/ディレクターの採用・教育・アサインを10年以上続ける中で、UI/UX関連の本は発売され次第、網羅的に購入して読みつづけてきました。オフィスと自宅の本棚には古いものも合わせて100冊近いUI/UX関連の書籍が並んでいます。デザイナーやディレクターの面接の時に、候補者の情報感度を知るために「最近読んだUI/UX関連の本で良かったものはなんですか?」という質問をする会社もあるようですね。
2022年上半期時点で、現役のデザイナーやディレクターが読んでいる鉄板の本をまとめましたので、ぜひ参考にしてください!
【レベル別】UI/UXデザインを学ぶのにおすすめの本20選(2021年下半期)
初心者:UI・UXとは何か、違いや概要を知りたい! という方へ
UI/UXデザインの原則
UI/UXデザインの原則(著:平石 大祐/幻冬舎/2020)
UI/UXって何?というところからスタートし基本的なことが網羅的に解説されています。本の帯に書かれている「原則×法則」のコピーの通り、UI/UXの重要性や考え方(原則)と、具体的にどうかするのか(法則)がバランス良く紹介されています。ある程度の知識や実務経験がある人が読むとちょっと物足りないかも。
UXデザインの教科書
UXとはなにかを奇をてらわずに紹介している良書です。2016年発刊なので5年前の本なのですが、内容が普遍的なので色褪せない強さがあり、いい意味でまさに教科書。UXに関して網羅的に書かれているので、この本を読んでから個別のトピックスを深ぼっていくと効率よく学習できます。どのデザイン会社に行ってもだいたい本棚においてある印象。私は持っていること忘れて2冊買ってしまいました。
UIデザインの教科書
UIデザインの教科書[新版] マルチデバイス時代のインターフェース設計(著:原田 秀司/翔泳社/2019)
「UI」はUXに比べると考え方よりも実践やテクニックに寄りがちなのは仕方ないところですが、本書は単なるテクニック本ではなく「なぜそのUIが良い=使いやすいとされるのか」という背景や理由を丁寧に説明してくれています。デザイナーがUIスキルを取得するためにも、ノンデザイナーがクライアントや同僚になぜこのUIを採用するべきかを説得するためにも役立つ本です。ちなみに『UXデザインの教科書』と名前は似ていますが、出版社も著者も別です。
UX実践編:実務で使える武器を増やしたい方へ
ビジネスマンのための新教養 UXライティング
ビジネスマンのための新教養 UXライティング(著:髙橋 慈子,冨永 敦子/翔泳社/2020)
UXデザインの仕事をすると「作文」の多さに戸惑う方も多いと思います。企画書、ペルソナ、カスタマージャーニーから、ボタンの文言までライティングだらけです。実務でもいろんなアプリやWEBの事例を見ながら四苦八苦するのですが、この本には考え方だけでなく、事例が多数載っているので非常に実用的です。現段階で日本語で読めるUXライティングの本では決定版です。今後、この領域の本はもっと需要があると思います。
ユーザーインタビューをはじめよう
ユーザーインタビューをはじめよう(著スティーブ・ポーチガル、訳:安藤 貴子/ビー・エヌ・エヌ新社/2017)
ライティングと並んでUXデザインの実務で頻出するのが「ユーザーインタビュー」。ユーザーの行動や思考を収集したり、コンセプトシートやモックを提示して反応見たりと、一つのプロダクトやサービスを完成させるまでにデプスインタビューやFGI(グループインタビュー)を何度も実施します。口頭で話を聞くなんて誰でもできてしまいそうですが、ぜひ一度本書を読んで心構え、対象者との向き合い方、良い質問の投げかけ方などを勉強するのに良い入門書です。極めて実践的な本なので、インタビューをこれから担当する人、何度かすでにモデーレーターを経験したことがある人が読むと最適です。
デザイン・リサーチの教科書
デザインリサーチの教科書(木浦幹雄/ビー・エヌ・エヌ新社/2020)
インタビューからもう少し視野を広げて、デザイン作業に必要な調査全体を学ぶのに最適な一冊です。調査関連の本は大学の教科書をはじめ多数あるのですが、本書はデザイン領域に特化しているので効率よく情報摂取できます。ややアカデミックな概念論から、デザインリサーチプロジェクト運用の方法、実際の書面サンプルといったド現場のノウハウまでぎっしりと詰まっています。一度さらっと目を通した後、実務で必要になった時に思い返してリファレンスにすると良いでしょう。私もデスクの傍らにおいてあります。
Web制作者のためのUXデザインをはじめる本
Web制作者のためのUXデザインをはじめる本 ユーザビリティ評価からカスタマージャーニーマップまで(著:玉飼真一、村上竜介、佐藤哲、太田文明、常盤晋作、株式会社アイ・エム・ジェイ/翔泳社/2016)
アイ・エム・ジェイの現場で活躍される皆さまによる共著。Amazonの書籍紹介からのコピペになりますが、UXデザインの「基本」から 「ユーザビリティ評価」「プロトタイピング」「構造化シナリオ」「ユーザー調査」「カスタマージャーニーマップ」「ユーザーモデリング」「組織導入」までが解説されています。これらを一通り経験するとUXデザイナーやってます、と名乗っても許されるのではないでしょうか。「あ、これは実務やっている人がガチで書いているな」という感じ。
IA/UXプラクティス
IA/UXプラクティス モバイル情報アーキテクチャとUXデザイン(著:坂本貴史/ボーンデジタル/2016)
UXを構成する重要な概念であるIA(情報設計・情報アーキテクチャ)について書かれた本です。誤解を恐れずに一言で言えば、IAとはサイトやアプリが「わかりやすい! 快適!」と思ってもらえるかを構造的に考える技術です。UXという体験全体を、IAという分かりやすさが支えるという関係性でしょうか。次の「UI編」でももう一冊、IAの本をご紹介しますが、本書のほうがよりUX寄りの内容だと思います。
UI実践編:手を動かし構築する方、マネジメントする方へ
IA 100
IA100 ユーザーエクスペリエンスデザインのための情報アーキテクチャ設計(著:長谷川 敦士/ビー・エヌ・エヌ新社/2009)
タイトルから「小技が100個載ってそう」と思われるかもしれませんが、IAをどのように設計していくかの考え方や手順がきちんと説明されている良書です。一定の実務経験がある方が読むと自身がやってきたデザイン作業への理解が深まると思います。10年以上前の本なのですが、IAからスタートしUXとの関係性にも触れられているあたりも、先見性があった書籍ですね。この本もデザイン会社とか開発会社の本棚によく置いてある印象。
デザイナーのためのプロトタイピング入門
デザイナーのためのプロトタイピング入門(著:キャスリン・マッケルロイ、訳:安藤貴子/ビー・エヌ・エヌ新社/2019)
ビジネス理解やUXからスタートし、実際にプロトタイピングを進めていくための方法論がまとまっています。本書が特徴的なのはWEBやアプリなど画面で完結せずに、ハードウエアを伴うプロダクトにも触れている点です。画面設計だけのプロトタイピングの本は数多いのですが、広義のプロトタイピングについて書かれた日本語の本はまだほとんど無いかと思います。「稼げるデザイナー」になるためには、こういう新領域にチャレンジしていきたいところですね。
UIデザイン みんなで考え、カイゼンする。
UIデザイン みんなで考え、カイゼンする。(著:栄前田 勝太郎、河西 紀明、西田 陽子/エムディエヌコーポレーション/2019)
デザイナーよりも、PM的立場の方やデザイナーに発注する立場(クライアント)の方におすすめの一冊です。経営者、マーケター(リサーチャー)、営業、PM、エンジニアなどの関係者がどのような役割を持ち、カイゼンに貢献していけるかについて述べられています。決して正解のない領域なので執筆には勇気が必要はないかと思いますが、一読の価値ありです。(心の声ですが...威張り散らしているだけのクライアントに読ませたい一冊でもあります。)
オブジェクト指向UIデザイン
オブジェクト指向UIデザイン──使いやすいソフトウェアの原理 WEB+DB PRESS plus(著:ソシオメディア株式会社、上野 学、藤井 幸多/技術評論社/2020)
ソシオメディアさんによる一冊。「タスク指向」と「オブジェクト指向」という2つの概念を対比しながら、主にオブジェクト指向UIについて解説しています。ほとんどのUIデザインは「オブジェクト指向」で構築されていますが、コロナ以降は単一機能の「タスク指向」のアプリが少し増えましたね。厚生労働省のCOCOAとか。ちょっと分厚い本なので、主要部分を流し読みするような読み方でも良いと思います。
心理学編:1冊ぐらいは読んでおきたい方へ
UIデザインの心理学
UIデザインの心理学―わかりやすさ・使いやすさの法則(著:Jeff Johnson、武舎 広幸、武舎 るみ/インプレス/2015)
ここに本文を書きます。
インタフェースデザインの心理学
インタフェースデザインの心理学 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針(著:Susan Weinschenk 訳:武舎 広幸、武舎 るみ、阿部 和也/オライリージャパン/2012)
デザイン上のテクニック論ではなく人間の頭の中での情報処理がどうなっているか、といった学術的な背景を十分に踏まえた一冊で、学術書と実用書の中間のような内容です。大学などで心理学、認知心理学などをかじったことがある人が読むと一層面白いと思います。参考文献リストがしっかりと載っているので、この界隈の一次ソースを探すためのリファレンスとしても機能します。
続・インタフェースデザインの心理学
続・インタフェースデザインの心理学 ─ウェブやアプリに新たな視点をもたらす+100の指針(著:Susan Weinschenk 訳:武舎 広幸、武舎 るみ、阿部 和也/オライリージャパン/2016)
『インタフェースデザインの心理学』の続編です。著者、訳者、出版社も同じです。続編ですが、前著を読んでいなくても理解できる内容になっています。前著と同様に論文を中心とした学術的背景を援用しながら展開されますが、後半にはスマホを始めとする最近のデバイス対応などのトピックスが書かれています。
そもそもデザインとは編:初心者と上級者で味わいが変わる
誰のためのデザイン
誰のためのデザイン? 増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論(著:D. A. ノーマン、訳:岡本明 、安村通晃、伊賀聡一郎、野島久雄/新曜社/2015)
アメリカの認知科学者ノーマンが執筆した、デザイン界で長く読まれている名著。1990年に初版が出版され、2015年に増補版が日本でも出版されました。見栄えを良くする装飾としてのデザインではなく、誰にとっても使いやすくするにはどう設計すれば良いのか、という視点のデザイン論です。WEBやアプリと行った画面内のものではなく、リアルプロダクトの事例が多いです。ざっと読んだ後に、身の回りのプロダクトを眺めてみると、気づくことが多いはず。
融けるデザイン
融けるデザイン ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論(著:渡邊 恵太/ビー・エヌ・エヌ新社/2015)
「ハード×ソフト×ネット時代の新たな設計論」というサブタイトルの通り、デバイスを超えた体験を作っていくことが求められるこれからの次代に向けた一冊。情報の道具化、自己帰属性などの概念を用いながら、領域を超え生活に融けはじめているデザインの考え方を整理しています。上記の『誰のためのデザイン』よりも読みやすいと思います。
「ついやってしまう」体験のつくりかた
「ついやってしまう」体験のつくりかた――人を動かす「直感・驚き・物語」のしくみ(著:玉樹 真一郎/ダイヤモンド社/2019)
元・任天堂のデザイナーである著者による、ゲームを題材にしたデザイン本。UI/UXの本はアカデミックで小難しい本が多い中、ゲームが題材であるだけでなく、書きっぷりも含めてとても易しく頭に入ってきやすい一冊なので初心者にもおすすめできます。一方、本書から体験デザインについての一般論を抽象化できるかは読者の力量次第かと思います。初心者時代に読んだ後、実務を経て再読すると、味わいが変わる一冊だと思います。
究極編:HIGとMaterial Designは...ちゃんと読んだ?
Human Interface Guidelines
Human Interface Guidelines(Apple)
言わずとしれたHIG。Appleがつくり、更新を続けているUI設計の指南書です。Apple製品のデザインに特化しているわけではなく、普遍的なデザインのあり方について説明しています。多くのデザイナーが「Human Interface Guidelinesはちゃんと読んでおけよ」と先輩に言われつつも、英語なので読まずに今日まで来ているのではないでしょうか。残念ながら現時点では日本語版は提供されていませんが、Google翻訳にいれればかなりの部分は読めると思います。(かくいう私も全部読んだのは10年ぐらい前で、久々に覗いたら中身がガラッと変わっていて驚いたクチでした。)
Material Design
Material Design(Google)
Googleが提唱するマテリアルデザインのガイドラインです。HIGと同じく英語ですがガイドラインサイトが非常に充実しています。図やイラストをたくさん使ってくれているので、HIGよりも現時点ではわかりやすいかと思います。
これからのUI/UX関連書籍
改めてまとめてみると、良書は多少古くなっても輝きをなくさないですね。特にUX領域は内容に普遍性が高いので、10年後も同じような本が読まれているのかもしれないなと思いました。一方で、「UXライティング」「UX調査」といった個別の作業に関しては、まだまだ日本語で読める本が少ないと思いますので、良書の誕生を楽しみに待ちたいと思っています。
UI領域では『Human Interface Guidelines』『Material Design』は最強ではありますが、英語ということもあり、ちゃんと全部読んだ人は少ないというのが実態かと思います。業界内で参照されることが少ないので、あえて20選に入れませんでしたがMicrosoftの『Microsoft Design』も、MS商品だけではなく広範なデザインシステムについて、充実したリソースを提供してくれています。毎年、新しいiPhoneが出るごとに更新される内容もあると思いますので、UI領域はしっかりとアンテナを高く張って情報収集に励みたいところですね。
2021年以降、そんなにたくさんUIUX本は出版されなかった印象です。最新情報はブログやSNSで一気に認知されてしまうからかもしれないですね。本で基礎を身に着けて、SNSでアップデート、みたいな組み合わせが今後のスタンダードになるのかもしれません。
以上、UI/UXデザインに関するおすすめの本のご紹介でした。他にも、こんないい本があったよ、といった情報あればお待ちしております。